読書メモ・注釈

文学など理解用の読書メモです。

フローベールの「地獄の夢」を読む (初期作品①/全集6巻)

3/5/19(水)、フローベールの「地獄の夢」を読み終える。1837年3月20日とあるので、本人14歳時(1821年12月12日)の作品である。 冒頭と末尾に、創世記の物語のように、悪魔と神のような声がでてきて、新しい世界を創造するとか、いや、もうそんな世界は作らなくても良いだとかの議論がある。そして、物語の中に入る。

悪魔と、世捨て人のアルチュール・グルマエロなる公爵が出てくるが、このアルチュールは退屈で、退屈でたまらない。希望や期待がかつてあったのかも知れないが、今は倦怠感のみ。彼は肉体を象徴しているのか。一方で、彼の前に表れる悪魔は、アルチュールの存在が欲しい、彼の肉体に宿る魂が欲しい。しかし、アルチュールは自分には魂などないと反論する。

悪魔は、じゃあ、ということで、村の娘、牛引きの娘ジュリエッタをなぜか選抜して、彼女の心にアルチュールに恋をするように図る。これはダンテの『新生』の中の「愛の神」を思わせる。結局、アルチュールは、悪魔の誘惑の化身である娘ジュリエッタになびくことなく、彼女は断崖から身を投げてしまう。

ただ、この間の時間軸が4年であるとか、また公爵アルチュールには、悪魔と対峙する時、翼があったりするので、普通のリアリズムとは違う。悪魔が誘惑の化身として差し向けるジュリエッタは生身の娘であるが、悪魔の力により、自分自身ではなくなっている。このくだりを読みながら、小説『ソラリス』を思い出した。