読書メモ・注釈

文学など理解用の読書メモです。

フローベールの「この香を嗅げ~一名、大道曲芸師のむれ」を読む (初期作品①/全集6巻)

2/22/19(金)、フローベールの「この香を嗅げ~一名、大道曲芸師のむれ」を読み終える。1836年4月1日とあるので、本人14歳時(1821年12月12日)の作品である。

 

「この香を嗅げ」という時の「この香」とは、大道曲芸師マルグリットがかぐべき「香」という作者の説明書きがなされている。

 

この物語では、皆からバカにされ、自分の夫ペドリョからも暴力(今で言うDV)を振われる、歯の抜けた醜い女曲芸師の不幸な後半生が描かれる。最期は、その不幸に耐えかねて、セーヌ川に身を投げて最後を遂げることになるが、作者フローベールは、マルグリットの嫉妬と、愛する夫に裏切られ屠られる不幸をどこまでも描き続ける。

 

マルグリットは、夫ペドリョとの間には、オーギュスト、エルネスト、ガロファーの三人の息子がいる。しかし、夫ペドリョは、同じ大道曲芸一座のイザンバールの妹イザベラダに横恋慕し、子供さえもうけてしまう。マルグリットの嫉妬はいかばかりか。その苦悩が描かれる。

 

フローベールの「サン・ピエトロ・オルナノ」を読む (初期作品①/全集6巻)

2/14/19(木)、フローベールの「サン・ピエトロ・オルナノド」を読み終える。1835年~1936年とあるので、本人14~15歳時の作品である。

 

サン・ピエトロ・オルナノとは、名をはせた海賊である。場面は、コルシカのジェノアだ。フランスの名代として、ジェノアの総督に迫る、そんな物語だが、オルナノは、総督の娘ヴァニナを欲しがっている。

総督が、娘のヴァニナを自分に譲ってくれれば、ジェノアを攻撃しない、そのような取引条件を出す。しかし、総督はそれを激しく拒む。ジェノアが陥落したとしても、娘のヴァニナを手放すつもりはない。

物語は緊迫し始めるが、そこは、海賊オルナノ、真夜中に覆面をしてコルシカ島に上陸をして、娘ヴァニナを奪い取る。ヴァニナは、悲しむも、しばらくすると、オルナノさえ情を感じるようになる。

そして、決戦の日を迎えるが、総督の娘ヴァニナであり、しかも、海賊オルナノの女でもあるヴァニナが、ある解決、いわばソリューションを行い、物語は結末を迎える。

 

総督は、後年書かれる『サランボー』のカルタゴの大将ハミルカルを彷彿とさせる。海賊オルナノは、まさに戦士マト―であり、娘ヴァニナはサランボーである。作家フローベールは、このモチーフを後年、完成させていくのだが、彼の心には脈々とこうしたテーマが流れていたのであろうか?

 

フローベールの「ド・ギュイーズ公の死」を読む (初期作品①/全集6巻)

2/12/19(火)、フローベールの「ド・ギュイーズ公の死」を読み終える。1835年9月の本人14歳の時の作品である。

 

ド・ギュイーズ公爵(1550~1588)とは、神聖同盟など宗教改革の頃の人。当時は、アンリ三世がフランスを牛耳っており、ド・ギュイーズ公はその仕事ぶりから、アンリ三世を疎んじ、暗殺の対象となっていた。

物語は、暗殺の前夜のさる館でのシーンを描く。とても緊迫した場面を感じることた。アレクサンドル・デュマの『アンリ三世とその宮廷』と同じ雰囲気を持っているとの解説がある(同14頁)。

フローベールの「『芸術と進歩』第2号」を読む (初期作品①/全集6巻)

2/11/19(月)、フローベールの『芸術と進歩』第2号を読む。

フローベール14歳の時の中学生の新聞だ。

「地獄の一夜」は、北アフリカアトラス山脈で、余(私)が悪魔に連れ去られて世界を見る話。後年の『聖アントワーヌの誘惑』を彷彿とさせる話だ。

北アフリカは、後年の『サランボ―』へとつながる。悪魔の発想は、ゲーテの『ファウスト』から来ているのか。

14歳のころから、その好み嗜好は、出来上がっているのであろうか?それを生涯を通じて反復し、実現していくのが作家の作品であろうか?

『プヴァールとペキッシェ』を読み終える

2/11/19(月)、ようやく読み終える。1/7/19からなので、1ヶ月もこの小説を読んでいた。この調子だと一年で10冊程度か。

『プヴァールとペキッシェ』は、フランスの作家ギュスターヴ・フローベールの遺作。物語は、 47才のパリっ子で、筆耕の仕事に従事していた二人が出会い、遺産もあり、フランスの片田舎で、農学・医学・天文学・政治・文学など、ありとあらゆる実学・学問を踏破し、批評する小説だ。

最後は批評が過ぎ、村人たちに煙たがれ、筆耕屋に戻るという結末。しかし作品は、59才を迎えた作者の死で未完に終わる。誰かがコメしていたが、日本で言えば、漱石の『吾輩は猫である』を人間2人にした感じであろうか。

これまで『ボヴァリー夫人』『サランボー』、『感情教育』『聖アントワーヌの誘惑』『三つの物語』『紋切型辞典』を読んできたが、この『プヴァールとペキッシェ』を加えて、フローベールはこれだけの作品しか残していない。

短編 ・習作を含む初期作品は、まだ読んでいないが、上記の三冊分位ある。

愛弟子のモーパッサンは、『プヴァールとペキッシェ』が刊行された直後、コメントを寄せているが、本小説を「百科全書的」「哲学小説」と呼んでいる。

フローベールの『ブヴァールとペキュシュ』を読む

◆1/12/19(土)


第3章。農園、医術、天文学、養成術、ブヴァールとペギュッシェは、様々な実学を文献を頼りに試しては失敗、次の領域へと向かう。


実学に対するポエジーのようにも思える。


◆ 1/7/19(月)

読み始める。

第一章、背の高いプヴァールと、背の低いペキュシュが、パリを離れて、シャヴィニョールでの隠遁生活の一日目までの物語。

併せて、『紋切型辞典』も拾い読み。

フロベールの『聖アントワーヌの誘惑』を読み始める

12/29/18(土)

読み終える。夜なべして。スピノザの『エチカ』の影響も見られた。本書をささげた親友だかが、スピノザに傾倒していたというから、その思想にも親しんでいたのだろうと思う。

 

12/23/18(日)

全集版で、あと30章。ブリューゲルの『アントワーヌの誘惑』の絵がある。ゲテモノのような絵画だ。この絵画を見て、フローベールは、小説の着想を得たという。これをもう少し早く知るべきだった。色々な神話の神がでてきて、どうもストーリーを追っていくような気持ちとは違う展開だ。ブリューゲルの視点を頭に入れて、読み切ることにしよう。

 

12/10/18(月)

第4章位だと思う。アントワーヌは幻想の中で、さまざまな邪宗門の始祖と相まみえる。ダンテの『新曲』みたいなような。アントワーヌとグノーシス異教徒たちの、ストレートな話し方が面白い。キリスト教ユダヤ教の教え、聖書に書かれてある教えをめぐっての異教徒たちの考え方、アントワーヌの立ち位置が面白い。

 

12/6/18(木)

第2章。バビロンの王。アントワーヌは、王の頭の中を盗み取り、自分が王になる。夢か幻視の世界。『神曲』の世界だと思う。

 

12/5/18(水)

第2章読みはじめる。ようやくアントワーヌの世界に入る。『サランボー』にも似ている。

第2章は、アントワーヌの幻想の世界。あるいは、1章で倒れた後の夢の世界か。それにしては鮮明で、彼自信も明晰である。

 

12/3/18(月)

全集版で読み始める。岩波文庫版は、漢字がやや古く難しい。訳者は同じ。第1章を読み直す。スピノザの『エチカ』を読み進めていたので、気分を入れなおす。

 

聖アントワヌの誘惑 (岩波文庫 赤 538-6)

聖アントワヌの誘惑 (岩波文庫 赤 538-6)